「電動キックスケーターの法的解釈」

2002年12月21日



 警視庁の発表と聞けば法的有効性を持ち、社会的に正当性のある内容だと理解するであろう。
 しかし警察庁の発表だからといって法制化されているわけではなく、法的有効性の無い発表をしてしまうこともある。
 
 電動キックスケーターと電動スクーター、この両者を警察庁が原付扱いとすると発表した。
 原付化に反対しているわけではないのだが、疑問点が多いので警察庁に質問をした。
 当初原付であると言い張っていたのであるが、質疑応答を繰り返すうちに返答が曖昧になってきた。
 
 イス付きの電動スクーターは生産国の台湾や中国ではスクーターとして使用されている製品であり、
 日本へ輸入した業者が電動スケーター、電動ボード、電動キックボード等と表記して販売。
 これらが原付と解されるのは当然である。
 しかし電動キックスケーターは、形状も電動スクーターとは別物である。
 時速0キロ発進ではなく地面を蹴り、一定の速度に達してから動力が入るのでアシスト方式に近い。
 出力も原付の上限である0.6キロワットより下限のアシスト式自転車の規定内である0.25キロワット未満の製品が多い。
 諸外国ではアシスト式を0.3キロワット未満としているケースもあり、概ねアシスト自転車と同じ出力となっている。
 これらの製品は制御回路を改良すれば完全なアシスト方式にすることも可能である。
 しかもアシスト式自転車の中には100%アシストつまり全く漕がずに走れる製品も走っていたりと混乱状態である。
 
 一昨年にキックスケーターの安全基準作成研究委員として基準作成に望んだわけだが紛糾の末に公道走行可とさせた経緯がある。
 自転車は元々キックスケーターと同じ形状であり、自転車は後にクランクを取り付けて出来上がった製品である。
 キックスケーターを見たことが無いという人達が大半であり、
 様々な機種が存在していることに関して自分以外は全員知らない状態からの説明だから紛糾も当然である。
 強度的にも幼児用、子供用、一般用、競技用として分類させ使用目的や使用者の年齢に適合した強度試験を行い
 実使用に即した基準作成を目指した。
 一般用として分類される製品の中には外国で警察が使用していたり、郵政省の指導の元、郵便配達に使用されていたりと実績のある機種も
 含まれている。
 
  危険性に関しても国民生活センターからの資料を基に調べたが、
 自転車に比べて台数辺りの事故件数も少なく一概に危険だとは断定出来ない。
 アメリカCPSCからの資料でも幼児を中心に重大な事故が多く、一般使用の目安である16歳以降から事故件数は激減している。
 つまり交通法規を知らず、危険性を予見出来ない幼児であれば事故に遭遇する危険性が高いが、
 キックスケーターそのものの危険性が高いとは指摘していない。
 
 我々は99年からキックスケーターを移動用具として使用し続け、
 都内を中心に国内各地で転倒した際の「受け身」、「乗り方」の指導を実施、
 三歳から八十歳の老人まで述べ一万人以上に指導をしてきた。去年からは電動キックスケーターの指導も併せて行っている。
 安全基準も公道使用が前提であれば、より厳しくならざるを得ないわけだが、
 「遊具」ではなく「乗り物」として考えた場合、ユーザーに取って歓迎すべきことである。
 
 その後も軽車両として公道走行可能ではあるが、防犯登録も含め「自転車と同等の扱いに」との署名活動を続けているが、
 今回の電動キックスケーターに関する疑問はまさしくここである。
 原動機付き自転車としての扱いが可能であれば、人力も自転車として認められたということであるのだが?
 返答は曖昧なままである。
 
 何故はっきり返答が出来ないのか?
 答えは道路交通法及び道路運送車両法の何れの条文にも記載が全くないからである。
 何度か改正されているが、現在キックスケーター及び電動キックスケーターに関する記述は一切存在していない。
 一昨年に人力キックスケーターの安全基準が制定されたばかりであり、電動に関して引き続き行われる予定であった。
 安全基準作成を先延ばしにして来たために今回の様な問題に至ったわけである。
 ちなみに人力は経済産業省、動力は国土交通省、アシストば両省を交えて話し合いをしなければならない。
 「面倒そうなので」というのが担当者から聞いた事情である。
 コレでいいのであろうか?
 事故が起きるまで放っておき、事故が起きたら
 「電動スクーターの事故」を「電動スケーターの事故」と警察が発表してマスコミが詳細を確認せず「電動キックスケーター」の事故と
 報道する。
 完全な情報操作である。
 三年前から人力キックスケーターが軽車両であるにも関わらず警察側は車両ではないので公道走行不可としてきた。
 当時、警察庁からマスコミ各社に対し「キックスケーターは公道走行不可」と報道して欲しいと申し入れがあった。
 公道走行不可と喧伝する暇があったら何故安全な乗り方を指導しないのであろうか?
 国土交通省側はキックスケーターは軽車両であると認めているのに何故この様な対応を続けたのか甚だ疑問である。
 街中から面倒そうな乗り物が消えてしまえば好都合と考えたのか?
 結果として今回も「動力付きは原付と解する」と発表したのだから疑問視されて当然である。
 警察庁は原付としながらも実際に登録出来るかは答えられないと回答、国土交通省は法的に明記されていないので判別不可能と回答し、
 実際にナンバーを交付する市区町村役場は仮に交付しても公道走行に関しては警察?と、たらい回しである。
 既得権益に関する様々な思惑も絡んでいる。
 キックスケーターを見たことも乗ったこともない人達の利益のための規制など必要ない。
 
 最近人力キックスケーターに都内の若手議員が乗り始めた。
 税金を使って駐輪場を乱造、乗り捨てたり違法駐輪した自転車をカンボジアへ売却するが輸送経費が嵩んで財政を圧迫している。
 キックスケーターが有効活用出来ると実験し始めたのだが、警視庁から「議員さんに乗られると困るので待って欲しい」と連絡が入った。
 理由を聞いても明確に答えられない・・・軽車両として走ること自体問題は無いはずだが、何か不都合なことでもあるのだろうか?
 
 アメリカはセグウェイに併せ州法を改正し、時速三十キロ以下は動力付きでも自由に走れる。
 日本は外圧・・・特にアメリカには弱いのだが、セグウェイが日本に入ってくるのも時間の問題である。
 世界一無意味な規制をして国民の失笑を買い、突然何事もなかったかの様に方針転換するのであれば、最初から交渉のテーブルに着き、
 密室会議でなくユーザーも交えて実使用に即した安全基準作成に取り組むべきである。
 警察や省庁に対する国民の信頼を失い続けるのは国益としても重大な損失であると考えるが如何なものであろうか?
 またユーザーもこういった問題に対して一致団結して強力に運動をしなければならない。
 
 バイクもライトの常時点灯や高速道路料金の差別化、未だ実現していない高速道路の二人乗りなどを掲げて20年前から運動している
 ユーザー団体が存在している。
 ユーザーが声を上げるのが一番効果がある!
 自らの責任を果たして自らの権利を主張する!
 これが民主主義の基本理念に他ならない!
 
 新しい乗り物は何時の時代でも向かい風だったのは歴史が証明している。
 これらの乗り物を普及させたのは他ならぬ熱心なユーザー達であったことを忘れてはならない。
 発言したいことは遠慮せずに発言して、疑問があればどんな相手にもしっかりと質問する!このような姿勢を忘れてはならない。
 
 「乗り物」は「乗せない」ではなく「乗って学ばせる」のが一番正しい指導方法である。


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